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ゆきのひ
雪の日
近松 秋江
「趣味」1910(明治43)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页
「フウ、そんなことがあったのか」
私はこう簡単に言った。
私が女といっしょになったのは、言うまでもなく、普通の手続きでこうなったのではない。妙な仲から今のようになったのである。女はその時、もうさんざん苦労を仕抜いて所帯崩しであった。私とこうなったについても、それからいっしょになってからも、四年越の今日になるまでには、一口にも二口にも言うことのできない――つまり主として私の性格境遇から由来した種々雑多な悲しい思い、味気ない思いもした。もとよりおもしろい思いもした。また不思議な嫉妬もした。それがためには私は身体が痩せるまでに悲み悶えた。しかしながら、それがどういうことであったか、ここではそれを言うまい。――あるいは一生言わない方がいいかもしれない。いや、言うべきことでないかもしれぬ。断じて断じて言うべきことでない。何となれば自己の私生活を衆人環視の前に暴露して、それで飯を食うということが、どうして堪えられよう!
私は、まだこの口を糊するがために貴重なる自己を売り物にせねばならぬまでにあさましくなりはてたとは、自分でも信じられない。
この創痍多き胸は、それを想うてだに堪えられない。