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ゆきま
雪間
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第五十六号」1957(昭和32)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,817 字 · 24 页
間もなく、すうっと消えて行きそう。淋しいのよ」
「病気だなんていっているけど、溌剌たるもんじゃないか。なかなか死にそうもないよ」
「お話ししたいこと山ほどあるの。ご迷惑でしょうけど、ぜひ聞いていただかなくてはならないの」
「今夜は変なものばかり見てしまって気が重い。二三日中に出なおして来て、ゆっくり聞くよ」
「なにを怒ってる。気に障るようなことをいったかしら」
「酒瓶の仕掛けというのは、眠り薬のことなんだろう? 笠原の細君は、亭主を眠らせておいて、夜から朝まで勝手なことをしているという噂を聞いたが、ほんとうのことだったんだな。なんのつもりでいるか知らないが、あんな好人物を弄ぶのはいい加減にしろ。面白くないよ」
「それもお話ししたいことのひとつなの。笠原の正体はどんなものだったかということを……」
安芸子は笑止そうに薄笑ってから、こんなことをいった。
「結婚した当座、じいちゃんのお勤めにうんざりして、ベッド・ワインにアドルムを仕込むようないたずらをしたこともあったけど、そのうちに、そんなこともめんどうくさくなってやめてしまったの。そうすると、笠原のほうから、要求するようになったというわけ……なにをいっているかわかるでしょう? 若いころのお道楽のむくいで、ぜんぜんダメになっているのを覚られまいというのと、あたしを悪者にし