轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ゆきま

雪間

久生 十蘭

「別冊文藝春秋 第五十六号」1957(昭和32)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,817 字 · 24 页

青空文庫

署長のそばへ行って、かたちばかりの会釈をすると、

「警察では事故だと思いこんでいるらしいけど、あたしにはうまく仕組まれた殺人だということがわかっている。こんどはあたしの番だというんだから、あたしが怖がるのは無理もないでしょう。帰れというから帰りますが、もし、あたしが殺されたら、あなたはさぞいやな思いをすることでしょう」

署長はこんなことには馴れきっているふうで、横を向いて相手にならなかった。

待たせてあった車に乗ると、安芸子は疲れきったようすで、ぐったりと座席に掛けた。

「どこへ行けば安心できるんだね?」

安芸子は顔をあげると、強い眼つきになって、

「あなたまでおひゃらかすの? あたしが冗談を言っていると思っているんですか。今日はバカな話はよしましょう……箱根以外ならどこでもいいから、気の向いたほうへやってちょうだい」

とニベもない調子でいった。

とりあえず湯河原へ行くことにして、運転手に宿の名を言ったが、ひどく真剣な安芸子の眼の色を見ていると、ただのヒステリーだけではないような気がして、急に不安になってきた。

「警察では、なにも言わなかったようだね」