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ゆきざっき
雪雑記
中谷 宇吉郎
「中央公論」1937(昭和12)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,988 字 · 20 页
はいって見たい衝動にかられることがある。
雪を人工で作るといっても、別に大して新しい変った考えがあったわけではない。色々やって見たが、結局自然をそっくりそのまま真似る方が一番利口であった。こんな問題になると人間の智恵などはまだなかなか駄目なものだとつくづく思った。自然の真似というと、結局冷い空へ暖い水蒸気を対流で送ってやって凝結させることなのである。それで装置といっても、対流を巧く生じさせて、その調節が出来るようにさえしてやれば良いのであった。ただ天然の場合は数時間かかって落ちて来る間にあれだけの発達をするのであるから、その時間だけ結晶を空中に浮游させる必要がある。それは低温室の中ではちょっとむずかしいので、差し当り兎の細い毛に結晶をつけて発達させることとした。丁度結晶が兎の毛で吊されたような形になって出来るのである。兎の毛で吊した雪の結晶なんて少しいんちきだといわれるかも知れないが、まあ当分のところはそれで我慢してもらうより仕方がない。それで結局、気温と水蒸気の量及び温度とを色々かえると、出来る結晶の形が皆違うのである。まさかあんなものは出来そうもないと思っていた珍らしい形の結晶、例えば段々鼓や角錐なども、あんまり簡単に出来てしまって少し飽気ない位であった。