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ゆきざっき
雪雑記
中谷 宇吉郎
「中央公論」1937(昭和12)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,988 字 · 20 页
しかし色々やっている中に、それは手の暖みによる輻射熱と手で暖められた空気の対流とによることが分ったので、手袋をはめることによって難なく解決された。手袋を手から出る暖かみを遮断するために用いるのはちょっと面白いが、考えて見るまでもなくすべての防寒具の目的とするところは結局同じことなのである。手袋をはめると益々仕事は面倒になる。暫くやっている中に、いくら外套をきこんでいても何時の間にか身体がすっかり冷え込んで、気がついて見ると足は小刻みにコンクリートの上をとんとんと踏んでいる。慌てて暖い部屋へ逃げ帰って、スチームの放熱器に腰をかけて暖まるのである。
こんな騒ぎをしてやっと顕微鏡写真をとることは出来たのであるが、今になってその頃の写真をとり出して見ると随分下手な写真である。それでも初めて現像して見て、結晶の像が出て来た時はとても嬉しくて、濡れた乾板を持って同僚の友人の所へ見せに行ったのであるから、随分滑稽な話であった。そんなことをしている中に最初の年の冬は明けてしまったのであるが、一度手がけて見ると、急に雪に対する愛着が出て来て、その後毎年冬になるのを待ち兼ねるようになった。