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ゆきざっき

雪雑記

中谷 宇吉郎

「中央公論」1937(昭和12)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,988 字 · 20 页

青空文庫

crystal という言葉は、ざらめ雪のためにしまって置こうというのである。私の方はそんな慾はないので、分離した結晶の方は snow crystal、牡丹雪のように沢山の結晶の集った雪片は snow flake ということにして置いた。ところが先生から世界中での命名を一定したいから自分の命名法を使わないかという勧誘が盛に来る。もっともそのこと自身には私も賛成であるが、しかし雪の結晶の中には鼓もあれば、針状のものもある。どうも鼓や針を flake というのは少し可笑しいと思ったので、その由をいってやった。ところが大変である。折返しタイプライター五枚位の返事が来て、細々と自分の命名法の由来を書いて来るのであった。やっとの思いでたどたどとその反駁を書いてやると、また五頁位の手紙である。何の辞書には flake という意味がこうなっている。何世紀頃にはどういう意味に使ったというのであるから、うんざりしてしまった。向うは秘書とタイピストとを使ってべらべらと喋れば済むことだし、こっちは一本の手紙を書くのに一日がかりなのだから、これではとても敵わないと諦めてしまった。