轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くもとこもりうた
雲と子守歌
小川 未明
「新児童文化 第1冊」1946(昭和21)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,823 字 · 10 页
月がなく、星の光も射さず、曇っているとみえ、外は暗かった。風だけ、低くかすめ、なんにでもぶつかっていく、そうぞうしいうめきがきかれたのであります。
子供は、白壁の上を、戸のすきまのあたりをじっと見つめていました。このとき、そこから、忍び込む悪魔がありました。はじめ灰色の雲のようなものがはい出ました。よく見ると、その雲の上に、黒い着物を着た魔物が乗っています。鋭い剣を手に持ち、怖ろしい顔をして、だんだん子供の体に近づくのでした。
「痛いよ! お母さん。」
子供は、逃げるにも逃げられず、もだえながら叫びました。
「お、おう、かわいそうに、また痛み出したのですか。」
いたわる母親の目は、すでに力なく疲れていました。その言葉にも、たとえ親とはいえ、どうすることもできぬなげきが感じられました。しかたなく、いつものごとく、子守歌をうたって聞かせるのです。
まだ、この子が、まったく乳飲み子のときから、抱いたり、おぶったり、寝かせるとき、うたった歌であります。子供は、これを聞きつつ、うつつの世界から、夢の世界へ、夢の世界から、さらに遠い生まれぬ前の世界へとかよった、ただ一筋のまぶしい、かすかな路でありました。