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くものわくころ
雲のわくころ
小川 未明
「小学六年生 5巻6号」1952(昭和27)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,198 字 · 11 页
そして、また、もとの場所へもどってくると、ちょうどおじさんは、さおをしまいながら、
「このあたりは、便利なもので、よく人が釣りにくるとみえて、魚がすれていて、なかなか、えさにだまされない。もっと奥のほうへいかなければ、かかりそうもないから、今日は、よすことにしよう。」と、勇吉に向かって、いいました。
「おじさん、ねむの花が、きれいに咲いていましたよ。」
「ああ、いまは、ねむが盛りのはずだ。」
「さっき、やまばとが、遠くで鳴いていましたよ。」
「かっこうは、きかなかったなあ。すこし奥へはいると、ほととぎすも鳴いているだろう。」
「おじさん、奥のほうは、ぼくにはいけそうもないところなんですか。」と、勇吉が聞きました。
「しかし、今日は、時間がないから、また、出なおすことにしようよ。」と、おじさんは、答えて、そのかわり、帰りに、見晴らしのいいところで、あちらの山々を見せてやろうといったので、勇吉は喜びました。
かれは、それに喜びを感じながらも、ここへは、いつまたこられるだろうかと思うと、なんとなく、川原にわかれるのが、おしまれたのでした。
やがて、けわしい、細い道を、息をきらして上りました。