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くものこみち
雲の小径
久生 十蘭
「別冊少年新潮」1956(昭和31)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,634 字 · 33 页
生前、どういう方だったのでしょう」
と肩を落して嘆息した。
「この方は邪心のあられた性格とみえまして、だいたいが、ひどくひねくれていらっしゃる。こういう霊は、いちどこじれだすと、誰の手にも負えぬようになるものでして、自然に心がとけるまで、お待ちになるほかはない……霊媒さんも、このところ、だいぶ疲労されたように見受けますから、この辺で、すこしお休みをねがって……」
と投げだしにかかった。
霊の友会の霊媒は、さる資産家の夫人で、道楽にそんなことをやっているということだが、肉置きのいい、ゆったりとした感じで、身の振りも大きく、卑しげなところはなかった。
白川が行きはじめたころは、主事の指導がないと無我の境に入ることができなかったが、しばらくすると、白川が手を握っているだけで、ひとりでやれるようになり、霊の来かたも、ずっと早くなった。
白川と香世子の対談は、いつも二時間以上もかかるので、一番あとにまわされて、夜の十時ごろからはじまる。霊媒は無我の境に没入しているので、意識はなく、香世子と二人だけの世界だから、遠慮も気兼ねもない。他人には聞きかねるようなことまでさらけだして、しんみりと語りあう。