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くものこみち
雲の小径
久生 十蘭
「別冊少年新潮」1956(昭和31)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,634 字 · 33 页
「あなたが知らなかっただけのことでしょう。そんなにびっくりすることないわ。あたしが霊媒だったら、どうだというの」
「ちょっと意外だったもんだから……なるほど、そういえば、あなたの顔は霊性を帯びているよ。あなたなら、やれそうだ。どこでそんな修業をしたんだね」
「須磨のバイバー姉妹のところで……五年ぐらい前から、よその家の玄関に立つと、その家の死んだひとの霊が見えるようになったので、あたしにも霊能があることがわかったの。自覚したのは遅かったけど、子供のときから素質があったわけなのよ」
「バイバー姉妹という二人組の霊媒は、パリにいるということだったが、須磨にもいるの」
「ええもう、それゃ、どこにだって……それでね、おねがいがあるのよ」
「あまりむずかしいことでなかったら」
「東京で研究会をもちたいと思うんだけど、後援してくださらないかしら、茨木なんかおやめにして、あたしにかかったら? どんな霊でもお望みどおりに出してあげてよ。香世子の霊は好かないけど、香世子の霊にしたって、茨木がやるよりずっときれいに出せるつもり」
「きれいにってのは、どういうことをいうのか知らないが、香世子さんの霊なら、ほかで出すよ。