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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

「やあ……。申し遅れましたが、私が高層気象研究所の北鳴です。こんどは御両親が飛んだことで。……それに貴方も、類焼の難に遭われたとかで、なんともはや……」

この静かな挨拶に、英三とても自らの僻んだ性根に赭くなって恥入ったくらいだった。

火を噴くかと思われた恋敵同士の会見が、意外にも穏かに進行していったので、一座は思わずホッと安心の吐息をした。それからのちも北鳴は、憎いほど謙遜と同情の態度を失わず、英三とお里とを反って恐縮させた上、最後に、彼等夫婦が想像もしていなかったような好ましい提言をした。それはこの比野町の西端に、新築の二階家があって、それを抵当流れで実は建築主から受取ったものの、自分はこの町に住むつもりはないので、空き家にして放っておくより法がない有様である。もし差支えなかったら、焼け出されたのを機会にといっては失礼だが、家賃なしでそこに住んでいてくれぬか。家が荒れるのが助かるだけでも自分は嬉しいのだがと、四郎は誠実を面に現わして説明した。

この思いがけない申出に、行き所に悩んでいた英三夫妻は内心躍りあがらんばかりに喜んだがともかくその場は明答を保留することとした。