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でんきかんばんのしんけい

電気看板の神経

海野 十三

「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,480 字 · 29 页

青空文庫

係官は犯人の嘲弄に悲憤の泪をのんだ。そして即時、このビルディングの徹底的家宅捜索の命令が発せられた。

その取調べの最中に、フラフラとやって来た岡安巳太郎が苦もなく刑事の手にとり押えられたのは、気の毒にも滑稽であった。

「ゆうべ、誰かがカフェ・ネオンで殺されたでしょう、刑事さん、僕は知っとる。だから、こんな化物のような電気看板は壊してしまえと僕は忠告しといたのです。それにひとの言う事を信用しないものだから、又誰かが殺されちまったじゃないか。今度は誰です。え、お千代、千代ちゃんか。すうちゃんはまだ生きていますかネ。可哀いそうな千代ちゃん。あの子の死んだのは、やっぱり今朝の二時二十分です。僕はちゃんとこの眼で、現在みていたんだからな。この看板のやつ、また瞬きをしやがった、この化物め!」刑事がこの厄介な男を制する間もなく、岡安は路傍の大きな石を拾い上げると、パッとネオン・サインを目がけてうちつけた。恐ろしい物音がして、サインの硝子が砕け、電気看板が壁体からグッと右の方へ傾くと、まだその儘にしてあったお千代の屍体がぬっと白日のもとに露出してきたもんだから、見て居た係官や群衆は、わっと声をあげると共に、顔の色を真蒼にしてしまった。