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でんしゃのみえないでんしゃどおり
電車の見えない電車通り
宮本 百合子
「進歩」1934(昭和9)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,599 字 · 12 页
然れども貴下の行動は恐らく本心より出でたるものにあらざるべしと思慮致候に付来る七日迄に復職願い出でられたる場合においては、当局々員として適当と認めたる時は実施案の本旨に鑑み特に今回にかぎり右処分を取消すことも有之べく念のため申添候。
「何だか意味深重な手紙だねえ」
弟がそう云っている。
「どういうのよ、これ。ね、お兄さん。それまでにストライキをやめろってことなのかしら?」
新聞は、今度の総罷業は「双方見事な統制で応戦」と報じているが、私は市中へ出て見てまた、こうして、新聞を見て奇異な感にうたれるのであった。成程、車庫は白服でつまってそのまわりはなめたように閑静だし、罷業団は職場以外のそれぞれのところに塊まって気勢をあげている。その状態を、見事な双方の統制というのかもしれぬけれど、どの電車の内、停留場にでも貼られているのは、電気局の儀式ばった印刷のビラだけで、従業員たちが直接市民に訴えるただ一枚のビラ、伝単さえ見当らないのはどういうものであろう。そしてまた、従業員の生活問題のために起った東交が、やはり一枚のビラをもまかず、市民に向って特別なアッピールをもしないでいるというのは何故であろうか。