轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

でんしゃていりゅうじょう

電車停留場

豊島 与志雄

「女性」1923(大正12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,082 字 · 31 页

青空文庫

息を吐いてる、会社員風の中年の男だった。それが三度ばかり、客の乗降の邪魔となって、それでもなお其処を動きそうにないのを見て、木原藤次は、別に何ということもなく、長い間の習慣から、機械的に声をかけてみた。

「中の方に願います。」

洋服の男はちらと振向いたが、ふふんと空嘯いた顔付で、また向うを向いてしまった。

それが一寸木原藤次の気にさわった。次の停留場で、大きな行李を背負った小僧が降りようとした時、彼はその行李に手を添えてやる風を装いながら、それを洋服の男の背中の方へぐいと押しやった。そして次に、二三人の客が乗ってくる時、彼は一寸男の肩へ手をやって、押し加減にしながら云った。

「中の方が空いていますから、中へ願います。」

瞬間に、男はひどく大きな声を立てた。

「馬鹿にするない。ここだって空いてるじゃないか。」

木原藤次は、彼のその威猛高な見幕によりも、事の意外なのに喫驚して、その喫驚した自分の心を立直すために、「お早く願います、」と乗客の方へ云い捨てておいて、運転手への相図の鈴の綱をやけに引張った。そして電車が動き出してから、じいっと洋服の男の方へ眼を向けた。