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れいかん

霊感

豊島 与志雄

「中央公論」1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页

青空文庫

新しくお求めなすったの。」

「達吉が拵えたんですのよ。気紛れに、つまらないことばかり始めて、仕様がありませんわ。ずいぶん長い間かかって、ようやく出来上りました。」

達吉というのは、小泉さんの息子で、建築が専門であって、美術学校出身なのです。

「ほんとに御器用ですね。」

「勝手なことばかりしていたいのでしょう。少し忙しくなると、不平でしてね。この頃は毎日、松しまへ出かけておりますの。」

小泉さんは達吉が自慢なのである。表面はけなすようなことを言いながら、じつは誉めてる調子でした。

松しまは、少しばかり距ったところにある花柳界のそばの、大きな一流の料亭でした。戦災にあいましたが、元のところに数室の家を新築して、繁昌しておりました。手狭なので、建て増しを始めて、前から出入りしていた達吉も、その方の仕事にかかっていたのです。

ただし、達吉は建築の専門家とはいっても、凝った普請についての技術者で、大きな設計図を弄りまわすことなどは不得意でした。ところが、達吉を贔屓にしてる女将は、なにかと彼に相談しかけました。相当多額の出資をしてもよいと言う人があって、その話がまとまったら、一挙に、昔のような広大な家にしたいと、間取りのことなど、達吉の意見を求めました。