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れいかん
霊感
豊島 与志雄
「中央公論」1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页
それだけならば、なんのこともなかったのですが、小泉さんは次の機会に、松しまの噂をまたもしました。達吉から聞いたことも伝えるという、それ以外に他意はなかったのでした。とにかく、女というものはお饒舌りなものです。
「達吉が女将さんから聞いたところによりますと、やっぱり、資金の話は、今年中にはまとまりそうもないらしいんですの。そして、手堅くやってゆくことに、女将さんも賛成らしいんですよ。」
「そうでしょうとも、それがほんとうですわ。」
それはただ軽い応対でしたが、A女はそのあとで、忠告するように言いました。
「あのうちには、熱心に信仰したものがあるはずですよ。それが今はうっちゃってあります。も一度信仰なされば、きっとよいことがありますでしょう。どうやら、伏見稲荷のように思われますがね……。」
「そのこと、達吉に聞かせてみましょうか。」
A女は夢から覚めたようにびっくりしました。
「いけません。そんなこといけませんよ。どうか内緒にしといて下さい。わたくし、ちょっと思いついただけですもの。」
A女はよく念を押しておきました。
けれども、小泉さんにとっては、そんなこと、大したことでもありませんでしたが、また、ちと気にかかることでもありましたので、達吉に話してしまいました。