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れいかん

霊感

豊島 与志雄

「中央公論」1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页

青空文庫

女中頭らしい年増の女が、女将さんの代りをつとめました。

稲荷さんのことは、一向に持ち出されませんでした。いつまで待っても駄目らしいので、A女がそれとなく合図をしますと、小泉さんがそれを言い出してくれました。

用件の話になると、こんどは急速にはかどりました。女将さんと女中頭とが、A女をあちこち案内しました。地所はまだ広く残っていますが、そこは将来の増築の場所ですし、庭の方にも思うような場所はなく、最後に、女将さんの居間の横手に連れてゆかれました。

「ここならどうかと思っておりますんですが……。」

女将さんは初めからそこを物色していたらしいようでした。

A女の胸にぴんときました。

――不浄の地。

A女自身にもその理由は分りませんでしたが、静に言ってみました。

「ここはなんだか、不浄な場所のような気が致します。」

女将さんと女中頭は顔を見合せて、頷きあいました。そして女将さんが言いますには、居間のそばだから丁度よいと思っていたが、言われてみれば、なるほど、そこの板塀の外が道路になっていて、夜分になると、立小便する人が多い、とのことでした。

そこがだめだとなると、ほかにもう適当な場所はなさそうでした。