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れいかん
霊感
豊島 与志雄
「中央公論」1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页
女将さんは溜息をつきました。
「どうしましょう。」
A女はためらわず言いました。
「いえ、もう場所はきまっております。」
こんどはA女が案内する番になって、一同は玄関から表へ出ました。
A女は寒竹の茂みのあたりを指し示しました。
「ここがお宜しいかと存じます。」
「女将さん。」女中頭が言いました。「わたしもそう申しておりましたでしょう。」
女将さんは頷きました。
事がきまりますと、A女はその足で辞し去ることにしました。お午の食事の支度が出来てるからと、女将さんと女中頭はしきりに引き止めましたが、A女は鄭重に辞退しました。
表の街路に出ると、小泉さんはA女を仰ぎ見るようにしました。
「まったく、あなたには感心しましたわ。」
A女はかるく含み笑いをしました。
「あんなの、なんでもないことですよ。」
それよりも、あとにまた別なことが出来てきました。
場所がきまったとなると、松しまの女将さんは、一日も猶予せず、稲荷さんの祠の建設に取りかかりました。それには先ず、地ならしをして、地所の浄めをしなければなりません。その地所の浄めを、A女にしてほしいと言い出しました。A女の住所は内密にしてありましたので、またもわざわざ、小泉さんのところへ女中が使に来ました。