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れいかん

霊感

豊島 与志雄

「中央公論」1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页

青空文庫

二度も来ました。小泉さんはA女のところへ、往ったり来たりしました。

A女ももう乗りかかった船と諦めました。その代り、条件を一つ持ち出しました。稲荷さんの祠が建ったら、伏見稲荷の御札を納める御魂入れの儀式を取行って、献饌の儀をしたり、祝詞を上げたりしなければならないのだが、それは自分のような素人にはだめだから、必ず正式の神官に頼んで貰いたいと、そういう条件でした。その条件を守って貰いさえすれば、素人の我流のやり方ではあるけれど、地所の浄めは引受けましょう、と返答しました。

それからいろいろ打合せをして、当日、A女はまた入念に化粧をし衣裳を選んで、小泉さんと一緒に出かけました。

寒竹の茂みを背景に、平らに地ならしが出来ていて、そこの小地域、四方に竹を立て、注連縄が張ってあります。中央には、御幣をつけた榊の枝が立っており、塩も盛ってあります。

A女はその細そりした体を、いささか前屈みにして、小揺ぎもなく突っ立ち、拍手を打って、「滌の祓」を読み上げました。

たかまのはらにかむづまります、すめらかむつかむろぎかむろみのみこともちて、すめみおやかむいざなぎのみこと、つくしのひむかのたちばなのをどのあはぎはらに、みそぎほらひたまふときに……