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ろはんせんせいのおもいで

露伴先生の思い出

和辻 哲郎

「文学」1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,158 字 · 9 页

青空文庫

「あれば」は一つの条件を示す言葉であるから、それを「ならない」で受けることはできないはずである。これが先生の主張であった。わたくしはいかにももっともだと思った。その後わたくしは自分の書いたものを調べてみたが、やはりところどころに使っていることを見いだした。そうして「どこまでも追究して見なければならない」というふうな言い回しが、「どこまでも追究して見なくてはならない」というのと幾分違った語感を伴なうに至っていることをも認めざるを得なかった。先生が「なければならない」という言葉に出会うごとに感じられたような不快な感じを、わたくしたちは感じないばかりか、そこに新しい表現が作り出されているようにさえ感じていたのである。しかしわたくしは、一度先生に注意されてからは、この言い回しを平気で使うことができなくなった。それでも不用意に使うことはあるが、気がつけば直さずにはいられないのである。そういうことをわたくしはほかの人にも要求しようとは思わない。どんな破格な用法を取ろうと、それはその人の自由である。日本語の進歩もたぶんそういう破格な用法からひき起こされるのであろう。