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あおいめがね

青い眼鏡

野村 胡堂

「富士」1929(昭和4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,201 字 · 24 页

青空文庫

(待て待てあの劇場のちらしの裏にある青色と赤色の文字、仕掛を見た時、島幾太郎とその手下の者が少しも驚かなかったのは何うしたわけであろう――、あの青い眼鏡でだけ読める仕掛けを、彼奴等は知って居たと言うのかな――それとも――国民劇場は一体今何んな狂言をやって居るんだろう?)

アッ、いけない、国民劇場は改築中で、先月から休場して居る筈ではないか、して見るとあのちらしは少くとも二三ヶ月前のものだ、――二三ヶ月前のちらしを料理屋の前で、しかも此寒空に配るというのは、どういうわけだ、アッ、これはいけない、俺は裏の青色と赤色の仕掛を解いて得意になって、もっと大事な事を忘れて居たのだ。

あのちらしを地下室の料理屋へ入る者全部へ手渡したのは何んの為だ。

(あのちらしが怪しい――)

花房一郎は此処まで考えると、あわてて自分のかくしを探りました。

「あったあった」

さすがに捨てもせずに、そのままちらしは衣嚢の中にあります。

「青い眼鏡――」

このちらしの裏の文句を読む為には、それは是非必要ですが、そんなものは、自動車の中にも、夜更の町にもあるわけはありません、が、ハット気の付いたのは、日本橋の袂に立って居る電車の信号手です。