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あおいめがね

青い眼鏡

野村 胡堂

「富士」1929(昭和4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,201 字 · 24 页

青空文庫

忽ち、赤い地模様も銀座節も消えて、青い地模様の中に、何やら外の文字? 手に取るように読めそうです。

「アッ、一寸その灯りを、一寸――」

「電車が来ましたよ、退いた退いた」

信号手はけんもホロロに信号灯を取り上げて、花房一郎から遠く、夜の街を猛獣のように駆けて来る電車に振ります。

「赤い光り、赤い光り」

見廻すと、向うの薬屋の軒に、真赤な電灯が大きい紅玉石のように、血紅の光を夜の街に投げて居ります。

花房一郎は横っ飛にその下へ、ちらしの裏へ深紅の光を浴せると、赤い模様も文字も消えてその代り、

「今夜一時十五分、日本橋の都銀行襲撃の予定、裏口は松井以下十五名、表口は大谷団長以下八名、金庫爆破の上本部引揚……」

これだけの文字が、ありあり画読まれるのです。青い光線を当てると、青色の文字が吸収されて、赤い文字の「銀座節」だけが現われ、赤い光線にさらせば、赤い「銀座節」は消えて、青色の唐草地模様の中に、恐ろしい兇賊団の打ち合せの文句がありありと現われたのでした。

「あっこれだこれだ」

花房一郎は雀躍りして、もう一度自動車の中へ飛込みました。

「都銀行の手前の露地で止めて、お前はすぐ本署へ電話をかけてくれ、大急ぎ」