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あおいめがね

青い眼鏡

野村 胡堂

「富士」1929(昭和4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,201 字 · 24 页

青空文庫

宇佐美六郎は、暫らくは黙ってそれを見て居りましたが、やがてニヤリニヤリと笑い乍ら、

「馬鹿だなア、そんなつまらない仕掛けがわからないかなア」

斯んな事を言います。

「貴方にはこのわけが解って? まアえらいわねエ、頭の毛が少くなっただけの事はあるワ」

「私の頭の毛の事ばかり言うと、私もつい村岡夫人の顔の皺の事を言い度くなるよ」

「何んですって? 私の顔に皺があるんですって、これでもまだ二十七よ」

「ホイ、お腹立ちでは恐縮、皺で悪かったらヒダ、それでもいけなかったら皮膚の折目」

「まあ、何んという悪い口だろう、覚えて居るがいい」

「又噛み合って居るの、本当に仕様の無い人達ねエ、それより、このちらしの裏の歌が私にだけ読めるわけを教えて頂戴よ」

芳野絢子は、宇佐美六郎の前に、問題のちらしを裏返して突き付けます。

「私にだって読めるわけは無い、――島君達は、とうにこの仕掛に気が付いて居るらしいが、極く簡単だよ」

「どんな仕掛なの」

「まア急ぐな、これだけの人間が居るのに、芳野絢子君以外には、誰にもこのちらしの裏の『銀座節』が読めないというのは、芳野君の眼が特別にいいと言うわけではなくて、芳野君の眼が外の人と違って居るからだと言うことになる――、芳野君の眼と我々の眼と何処が変って居るか、それがわかれば何んでもない事だ」