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あおべかにっき
青べか日記
山本 周五郎
――吾が生活 し・さ
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,334 字 · 76 页
此の無形の努力が一作毎に繰返されるから、作品が良ければ良い丈に頭は疲れる。悪かったらそれこそ災難ものだ。それに反して現代の物は、兎に角自分の気持で卒直に味わえるから、良い作であれば、直ぐ其の場で亢奮出来るし、悪作なら直ちに棄て去ることが出来る。よしや疲れるにしても画と観賞的努力間の燃焼に因るのみの疲労でそれは一種怪い亢奮である。
「名宝展」などの催しは、なるべく数を尠なく。交代に。低廉な観覧料で展観すべきだ。それでなければ蔽れた「名品」を一般に弘めると云う主旨は徹底しない。ああ後藤新平伯爵が二日ばかり前に死んだ。
「弘高」全部読み返した、四景程全部書き改めねばならない。だがどうにかやれるだろう。「ヒ」に電話かけた。久し振りで麦酒をのんだ。今夜も早く寝る。二五八九、四、一五。
明日から「裸婦」推敲にかかる。平安吾が上にあれ。
忘れていた、昨日東京へ行く時、今井から北浦の末子と、麻布の清子とによく似た少女に逢った。豊かなデリケエトな唇は、不思議に末子でもあり清でもある、小さな、細い〔時にきらきらと潤んで光る〕柔しい眼は清にその儘であった。そっと時折ひそめる表情の多い眉毛は末子である、顔全体は全く吃驚する程二人に似ていた。