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あおバスのおんな
青バスの女
辰野 九紫
「新青年」1929(昭和4)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,918 字 · 22 页
斯かる場合、沈黙こそは家庭円満の安全弁である。
それから僕は好んで青バスの愛用者となった。もう一遍、大西冬子嬢の所謂乗務振りを拝見しようとしたが、流石東京のことで、広くて狭くもあるが、狭くて広くもある。――新橋を基点として、上野浅草両方面に本石町で分れて循環するのと、新宿築地、丸ノ内廻りと、――至って簡単な運転系統である青バスの女車掌と限定されてあって、そのコース以外には脱れる気遣いのない白襟嬢に、廻り合うことすら、仲々天日に恵まれないのだから、思えば昔の仇討ちなんて、余程精神修養を積まないと、あんな悠長な真似は出来るものではない。況んや、僕は別に白襟嬢に恨みがあるわけでもなし、貸金があるのでもないから、忘れるともなく探す気持ちは薄らいで終った。
年々歳々春が来て、桜花の外に、今年は特に博覧会が人気を呼んで上野は大に賑わった。どこの勤労階級の家庭でもそうであるように、僕も一休日に、女房子供のお供を仰付かり折角の安息日を骨折損に疲れて、一日の奉仕を終り、例に依って僕愛用の青バスに、僕の一小隊を乗せて万世橋へと向った。上野広小路から御成道に進行中、僕はふと買物を考付いたので、突然女房に向って、