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あおバスのおんな
青バスの女
辰野 九紫
「新青年」1929(昭和4)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,918 字 · 22 页
いつだか六十銭の鰻丼を食って終ってから、えらそうに百円紙幣を出して釣銭を強要している奴と、椅子を二三隔てた時には、憤慨のやり場に困ったことすらある。だから、僕は次の停留場、通三丁目にさしかからない間に、先方も釣銭の出し易いようにと五十銭玉に二銭つけて、一区七銭を払おうとしたが、靴下の細っそりした白襟嬢は、車掌用語にでもあるらしく、
「細かいのはありませんか」とつんとしている。当方は掛値なしの小銭払底なのだから、然らば他の乗客相手の取引で車掌に釣銭の出来るのを待つ外なしと観念して、後部座席に着いた。すると、京橋で車掌が切符を切りに奥へ入って来たから、僕は再び前の通り繰返したが、今度は見向きもせずに、前部へ引返して終った。其間回数券の客ばかりで、現金の収入はなかったようだ。そこで、僕の下りるのは銀座の四角であるが、若しそれまでに釣銭が出来なかったら仕方がない。暑い盛りではあるが、終点新橋の青バス溜りまで乗って行って釣銭を貰い、徒歩で引返す外はないと覚悟を決めたものの日中そのテクがやり切れないから、出来ることならと、尾張町近くなって、三度五十銭玉に二銭添えて出すと、その女車掌がいうには、