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せいしゅんろん
青春論
「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页
彼は世の大人たちに負けてしまった。柳生派の大人たちに負け、もっとつまらぬ武芸のあらゆる大人たちに負けてしまった。彼自身が大人になろうとしなければ、負けることはなかったのだ。
武蔵は柳生兵庫のもとに長く滞在していたことがあったという。兵庫は柳生派随一の使い手と言われた人だそうで、兵庫は武蔵を高く評価していたし、武蔵も亦兵庫を高く評価していた。二人は毎日酒をくんだり碁を打ったりして談笑し、結局試合をせずに別れてしまった。心法に甲乙なきことを各々認め合っていたので試合までには及ばなかったのだという話で、なるほどあり得ることだと頷けることではあるが、然し僕は武蔵のために甚だ之をとらないものだ。試合をしなければ武蔵の負けだ。試合の中にだけしか武蔵の剣はあり得ず、又、試合を外に武蔵という男も有り得ない。試合は武蔵にとっては彼の創作の芸術品で、試合がなければ彼自身が存在していないのだ。談笑の中に敵の心法の甲乙なきを見て笑って別れるような一人前らしい生き方を覚えては、もう武蔵という作品は死滅してしまったのだ。
何事も勝負に生き、勝負に徹するということは辛いものだ。