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せいどうのキリスト
青銅の基督
長与 善郎
――一名南蛮鋳物師の死――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,703 字 · 133 页
が、中にはただの物好きな見物人のような顔をして「拝み」に来る信徒の女もいた。
「まあ、なんという結構な。――ありがたい。こんなありがたいお像を拝んだことはほんにあたし始めてでござんすわ。」
その女はうっかりこう口をすべらして自分の信徒であることを明かしていた。しかし芸術なぞのわかりようのないこういう普通の人の心でも打つ何物かが自分の作に宿っていると思うことは裕佐にはうれしかった。
「萩原さん。おごらんけりゃいかんぜ。あんた、にわかに大福長者になれるんじゃ。」
「あんた方の仕事はええなア。当たり出したら大したもんじゃ。」
こんなことをいう男たちも少なくなかった。
年は改まって裕佐は二十七になった。
元日の朝彼は窓に立ってのぼる太陽を拝んだ。「わが仕事に祝福をたれたまえ。願わくはそれをわが意のごとく成さしめたまえ。生命の主よ。」彼はこう口の中に祈った。
彼の仕事は着々というほどにははかどらなかったが、比較的早く進んだ。
「じゃ、月末の踏み絵式までにはなんとか間に合いますな。」見に来た役人はいった。
「それ見い。やって見れば、お主にはこれだけの腕はあるんじゃ。だからわしが鋳物をやれとあんなにすすめたんじゃに。