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せいどうのキリスト
青銅の基督
長与 善郎
――一名南蛮鋳物師の死――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,703 字 · 133 页
しかし二十何年も前に書いたものを一々そういって現在満足の行くように書き改めていてはキリがなく、また不備にして拙劣のように思える所があっても、若い時の作にはその時ならでは書けぬ一種の美点もないではない。それでまあまあこの作はこれだけのものとして我慢し、放免することにした。
「萩原裕佐は最後まで決して切支丹ではなかったのである! 彼はただ一介の南蛮鋳物師にすぎなかったのである!」
という結末の文句なぞは蛇足で、あんな説明はなくともすでに充分わかっているといってくれた人もあり、その通りと同感しながらも、それも削らず、ほうっておくことにした。
最後に一言しておきたいことは、普通ならばこういう切支丹ものを扱うに当たっては、ことにここではその舞台である長崎の情緒をもっと浮かび出させるために、長崎弁を人物に使わせたり、いわゆるエキゾチックのにおいを出すことに努めたり、要するにどこまでも趣味的あそび気分を出ないものに終わっているのが常である。自分はそれがいやであった。切支丹の史実というものは実に日本歴史の中でもある意味で最も日本国民の頼もしい美点を発揮した事柄であり、また世界史の一端として見ても重大なポイントをなす尊い史料である。