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せいどうのキリスト

青銅の基督

長与 善郎

――一名南蛮鋳物師の死――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,703 字 · 133 页

青空文庫

一隅には一匹の黒白の斑の牛が新しい藁をタップリと敷いて静かに口を動かしながら心地よげに臥していた。牛の前には赤飯を盛った盆が供えられ、そのわきになみなみと「産ぶ湯」の水をたたえた飼桶が置いてあり、その水に灯かげがあかく映っていた。もちろん、火がたいてあるのは「御子」が凍えぬようにとの意味である。

吉三郎は指でコツコツと合図をするように扉をたたいた。と、ぱっと扉が開き、あふるるばかりの光――裕佐にはそう感じられた――が滝のようにそこからほとばしり出るのであった。

「吉三郎さん?――お一人?」

扉口に立った女はこう張りのある声をかけて扉に片手をもたせながら、胸にかけた小さい金の十字架がぶらと前にたれるほど頭をかがめて薄暗い小屋の中の方をのぞくように見た。

「いや。いっしょ。ちょうどうまくお会いできたんでね?」吉三郎は元気よくいって、まぶしそうに目をしばだたきながら呆然とかたわらに突っ立っている裕佐の方を顧みた。

「あら、そう。――」女は一歩退いてちょっと目を伏せた。「あたし、ずいぶん、心配していたのよ。」

「だろうと思っていました。さあ、萩原さん。上がってください。