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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

この天然自然の育ち創られてきた媚態を鑑賞している人は久須美だけが一人であった。

若い目と目が人波を距ててニッコリ秘密に笑いあうとき、そこには仇な夢もこもり、花の匂いも流れ、若さのおのずからの妖しさもあったが、だからまた、そこには、退屈、むなしさ、自ら己を裏切る理智もあった。要するに仇心、遊びと浮気の目であった。

美青年に手を握られてみたいような、なんとなくそんな気持になる時もあり、美青年と一緒に泊りたわむれてウットリさせられたり、私はしかしそんな遊びのあとでは、いつも何かつまらなくて、退屈、私は心の重さにうんざりするのであった。

しかし私が久須美をめがけてウットリと笑い両手を差しのべてにじりより、やがて胸に白髪をだきしめて指でなでたりいじってやったり愛撫に我を忘れるとき、私の笑顔も私の腕も指も、私のまごころの優しさが仮に形をなした精、妖精、やさしい精、感謝の精で、もはや私の腕でも笑顔でもなく、私自身の意志によって動くものではないようだった。

つまり私は本性オメカケ性というのだろう。私の愛情は感謝であり、私は浮気のときは男に遊ばせてもらってウットリさせられたりするけれども、私自身が自然の媚態と化してただもう全的に男のために私自身をささげるときは、感謝によるのであった。