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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

しかし結果はアベコベだった。エッちゃんはそういう気質なのだ。励んだり、気負いたっているとき、出はなに躓くと、ずるずると、それはもう惨めとも話にならぬだらしなさで泥沼へ落ちてしまう。初日に負けて、いいのよ、あとみんな勝って下されば、二日目も負け、いいわ、あと勝って下されば、で千秋楽まで、楽の日は私もとうとうふきだして、いいわ、楽に初日をだしてよ、きっと約束まもってあげる、けれどもダメ、つまり見事にタドンであった。

エッちゃんには都会人らしい潔癖があるから、初日に躓いたとき、もうダメだったので、約束通り全勝して晴れて私を抱きしめたかったに相違ない。おなさけ、というようなことでは自分自ら納得できない気分を消し去ることができない気質であった。

私はしかしエッちゃんが約束通り全勝したらとても義務的なつきあいしかできなかったと思うけれども、見事にタドンだから、いじらしくてせつなくなった。

私はエッちゃんを励まして、共に外へでた。まだ中入前で、久須美は何も知らずサジキに坐って三役の好取組を待っているのだが、私は急に心がきまると、久須美のことはほとんど心にかからず、ただタドンのいじらしさ、人間侮蔑に胸がせまって、好取組の見物などという久須美が憎いような気持まで流れた。