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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

「いろんな人が、いろんなふうに口説くでしょう」

「そういうものかなア。僕なんざ、めったに口説いたことも口説かれたこともないんだがな。だけど、あれぐらいムッツリと思いつめて考えてるんじゃア」

「あなただって私をずいぶん悩ましたじゃないの」

「なるほど、そうか。そして結局こんなふうになるわけか」

「罰が当るって、なによ」

「なんだい? 罰が当るって」

「いつか、あなた、いったでしょう。オメカケが浮気してロクなことがあったタメシがないんだって。罰が当るんだって。罰が当るって、どんなこと?」

「そんなことをいったかしら。覚えがねえな。だって、お前、お前は別だ」

「なぜ。私もオメカケの浮気ですもの」

「お前は浮気じゃないからな。心がやさしすぎるんだ」

「たいがいのオメカケがそうじゃないの?」

「もう、かんべんしてくれ。僕はしかし、お前を苦しめちゃアいけねえから、フッツリ諦めよう。これからはもう相撲いちずにガムシャラにやってやれ。しかし、お前のことを思いださずに、そんなことができるかな」

「私は思いださない」

「僕がもうそんなに何でもないのか」

「思いだしたって、仕方がないでしょう。私は思いだすのが、きらい」