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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

久須美はそういう私の気質を知っていた。彼の買い物の選択はすぐれていて、その選択の相談相手は田代さんであった。私は私の洋服まで、私が柄や型を選ぶよりも、久須美にしてもらう方が好ましい。洋装店にからだの寸法がひかえてあるから、思いがけない衣裳がとどいて、私はうっとりしてしまう。田代さんやノブ子さんのいる前ですら、私は歓声をあげて自然に久須美にとびついてしまう。

私は朝目がさめて久須美を送りだすまでの衣裳と、昼の衣裳と、夜の衣裳と、外出しなくとも、いつも衣裳をかえなければ生きた気持になれなかった。うとうとと昼寝の時でも気に入りの衣裳をつけていなければ安心していられなかった。美しい靴を買ってもらうと、それをはいて歩きたいばかりに、雨の降る日でも我慢ができずに一廻り散歩にでかけずにいられなくなる。まして衣裳類はむろんのこと、帽子でもハンドバッグ一つでも、その都度一々私は意味もなく街を歩いてくるのであった。映画や芝居の見物よりも私にとって最もうれしい外出はその散策で、私は満足した衣裳を身にまとうとき、何より生きがいを感じることができた。

私はその生きがいを与えてくれる久須美に対してどのように感謝を表現したらいいか、そのことで最も心を悩ました。