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しずおかじしんひがいけんがくき

静岡地震被害見学記

寺田 寅彦

「婦人の友」1935(昭和10年)9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,949 字 · 10 页

青空文庫

その下に小さな子供が二、三十人も集まって大人しく坐っている。その前に据えた机の上にのせたポータブルの蓄音機から何かは知らないが童謡らしいメロディーが陽気に流れ出している。若い婦人で小学校の先生らしいのが両腕でものを抱えるような恰好をして拍子をとっている。まだ幼稚園へも行かれないような幼児が多いが、みんな一生懸命に傾聴している。勿論鼻汁を垂らしているのもある。とにかく震災地とは思われない長閑な光景であるが、またしかし震災地でなければ見られない臨時応急の「託児所」の光景であった。

この幼い子供達のうちには我家が潰れ、また焼かれ、親兄弟に死傷のあったようなのも居るであろうが、そういう子等がずっと大きくなって後に当時を想い出すとき、この閑寂で清涼な神社の境内のテントの下で蓄音機の童謡に聴惚れたあの若干時間の印象が相当鮮明に記憶に浮上がってくる事であろうと思われた。

平松から大谷の町へかけて被害の最もひどい区域は通行止で公務以外の見物人の通行を止めていた。救護隊の屯所なども出来て白衣の天使や警官が往来し何となく物々しい気分が漂っていた。

山裾の小川に沿った村落の狭い帯状の地帯だけがひどく損害を受けているのは、特別な地形地質のために生じた地震波の干渉にでもよるのか、ともかくも何か物理的にはっきりした意味のある現象で