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めんせきのあつみ

面積の厚み

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十五巻(補遺)」河出書房、1953(昭和28)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,111 字 · 15 页

青空文庫

と云った。

何と返事をしたらいいのか分らなかった彼女が、青い頬骨の突出た顔に漲(みなぎ)っている、何だか訳の分らないほど複雑な表情のうちから、言葉を見出そうとしているうちに、先生はすぐ後をつづけて、

「飛田さんには学校のことでお話していたんです。ちっとも叱られてなんかいたんじゃあ、ありません。ねえ、飛田さん」

と、飛田さんを見た。

「ね、そうですね飛田さん」

飛田さんは、唇の上に涎(よだれ)を一粒光らせながら、肯定も否定も表わさない微笑を漂わせて、何が起っても私は知りませんと云うように立っている。

「だから心配しないでもいいのですよ、大丈夫だから。決して叱っていたんじゃあないんだから……けれども、一体誰が貴女にそんな事を教えたんです。

おっしゃいな」

「…………」

「とにかくね、貴女が悪いことをすれば、きっと私は貴女を叱ります。そしてまた、若し飛田さんが悪いことをすれば、私はどうしても飛田さんを叱らなければなりません。貴女と飛田さんとは、まるで別々に一人ずつの人じゃあありませんか」

先生が、落付いた自信のある口調で明言したのを聞くと、彼女は思わずハッとした。