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めんせきのあつみ

面積の厚み

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十五巻(補遺)」河出書房、1953(昭和28)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,111 字 · 15 页

青空文庫

こう言明するからには、心からこう思っているに違いない先生に対して、失礼なことを考えていた相すまなさと、軽弾みだった自分の恥かしさとが、一時に強い感動となって心を撃ったのである。

今朝の先生と、現在の先生との間に、彼女はどうしようと思うほどの差異を認めた。

どっちが真個の、「この」先生なのか。

けれども、誰でもがそうである通り、彼女も、自分が教えを受けている先生は、下等で卑劣だと思うよりは、真個に尊ぶべき人格を持っている人として確信される方が、どのくらい嬉しくて、心が安らかだか分らなかった。

学問はたといそんなに偉くなくても、いつも心は正しい先生だと云う方が、彼女にとってはどのくらい有難かったか分らない。

そしてまた実際、貴女が悪いことをすれば、と云われた言葉には、真に卑怯なことなどは、微塵(みじん)も許さない心の強い人らしい力と、落付きと、誰憚らぬ威厳とがあったのである。

彼女は、まるで落してもう諦らめをつけていた宝石を、偶然再び見出せた時の通りの尊さと嬉しさとを感じた。

それが一度見失われた為に、再び現われたときの価値は、以前の倍も倍も有難いものに思われる。