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めんせきのあつみ
面積の厚み
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十五巻(補遺)」河出書房、1953(昭和28)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,111 字 · 15 页
そんなにも有難く思われる為に、一寸でも手離して塵まびれにされていた時が、堪らなく惜しく、すまなかったと感じられる。
失われていた時と、今、確かにこの手に持ち、この目で見ている時との心持の差が互に対照して、相当以上に強調された感動を与えるのである。
彼女における場合も、全くその通りで、相すまなさも、嬉しさも、二つながら過度なものではあった。
けれども、他人を叱らせては悪いと思うと、思う下から二階へ馳け上らずにはいられなかった子供の心は、一つ自分の尊敬に価するものに出会うと、その真偽も考えず驀進(まっしぐら)に、ただそれだけを見つめて突進しずにはいられなかったのである。
今、自分がこれほどの尊敬を払わずにはいられない同じ人は、さっきいかほど侮蔑すべき態度であったかと云うことや、その間に必然横(よこた)わっているべき矛盾などは、もう彼女の感動にいささかの影響を与える力も持たなかった。それどころか、何より大切だった面積の厚みの有無に対する疑問が、解かれないまま残されていると云うことさえ、この瞬間においては、全然彼女の脳裡から消え去っていたのである。単純で、一本気ながら熱烈な道徳的良心が、子供らしい真剣さをもって、あらゆる事物に向って作用する時代にある、感情的な彼女は、自分の判断で悪と認めたことには、渾身(こんしん