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おんぱのさつじん

音波の殺人

野村 胡堂

「新青年」1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,399 字 · 30 页

青空文庫

陪音の操作が微妙だから、――人間と同じように歌わせることだけは六つかしいが、器楽が自由自在に演奏出来るのだから、追々と歌や言葉だって出来ない筈はない、人間の歌や言葉を器械的に作れないと思うのは旧時代の迷信さ、現に蓄音機のレコードの溝や、トーキーのフィルムは立派に歌や言葉の器械的な記録を果しているではないか」

「――――」

「メカニズムが音楽界を支配する時代は屹度来る、実演よりよく演奏する機械や、人間よりよく歌う機械は、明日にも発明されるのだ、この機械なども、その一つの例さ、――気の毒乍ら、歌い手――わけても低俗な聴衆を狙う流行歌手などは、近いうちに飯の食い上げさ、そんな連中の職業は、この俺が――長島長太郎が皆んな奪って見せる、ハッハッ、ハッハッ」

洞ろな笑いが、巨大な機械の外に何んにもない研究室の四壁に木精して、千種十次郎をゾッとさせました。博士は自分を裏切った流行歌手若菜に対する怨を報いる為に、こんな飛んでもない機械の発明に没頭したのでしょう。

「先生、それより、大変な事が――」

「そうだ、大変な事がある、この機械で君、人が殺せるのだよ、人が――」

「えッ」