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おんぱのさつじん
音波の殺人
野村 胡堂
「新青年」1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,399 字 · 30 页
「俺には解らない事ばかりだ、其筋でも、若菜殺しを博士と覚った様子で、藤井薫を釈放した相だが――」
「博士に違いあるまい、――俺は最初からそんな気がしたよ。音波の殺人なんて、飛んでもない事を言って烟に巻いたのは一種のカモフラージュさ、自首したところなどは、実に頭が良い、誰でも、博士は少し気が変になったと思うよ、アリバイはうんと用意したし、あんなに物が運ぶと、ツイ犯人の自信が強烈になる」
千種十次郎は説き進みます。
「でもあんなに沢山博士に不利な証拠があったじゃないか」
と早坂勇、
「皆んな嘘だよ、――若菜の殺された家の窓枠は古くて木が荒れて居るから、縄梯子の鉤の跡などは見えなかったのさ、でも、踏台を使っては始末が悪いから縄梯子に相違ないと思って、博士の研究室の窓へ行って見ると、其処にはちゃんと跡があるじゃないか、博士の研究室の窓枠は新しくペンキも塗り立てだ」
「――――」
「驚いたろう」
「驚くよ、でもピアノの鏡板に映った顔は?」
「それも嘘だ、竪型ピアノなら後ろの窓の首が鏡板に映って弾いている者に見えるが、横台ピアノでは映らないよ、それに譜面台にはジャズの譜がうんと載って居たろう」