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おんぱのさつじん

音波の殺人

野村 胡堂

「新青年」1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,399 字 · 30 页

青空文庫

「医者は呼ばなかったのか」

「それから医者を呼んだが、心臓を射貫かれて居るから、助かりっこは無い」

「電話は警察が先で、医者が後だね、確かに」

千種十次郎はフトこの矛盾に気が付いたのです。

「間違いは無い――」

「取調べの模様は?」

「大きな声じゃ言えないよ、帰って書こう」

「いや、帰っちゃいけない、夜明けまで頑張れ」

「電話を警官へ明け渡さなきゃならない、――じゃ頼むぜ、頑張るだけ頑張って見るから、それから若菜の先の主人――音響学者の長島長太郎博士へ人をやったら、何んか変った話が取れるかも知れない――今鳥子が調べられて居るよ」

早坂勇の声は途切れ途切れで、恐ろしく面喰って居りました、多分後ろから警官に電話の明け渡しをせき立てられて居るのでしょう。

「勇、おい、早坂ッ、切っちゃいけない、おい、勇!」

が、どんなに騒いでも電話はそれっ切り、此方から逆に掛けても、お話中が続くばかりです。

「畜生ッ、――もう三分話せば、朝刊の早版へ三段以上は書けたのに」

千種十次郎がガチャリと受話器を投ると、まだ銀座あたりを泳ぎ廻って居た編輯局長の織戸友吉が、市内版最後の大組を見る為にフラリと編輯局を覗きました。