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あたまとあし

頭と足

平林 初之輔

「探偵趣味」1926(大正15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,733 字 · 4 页

青空文庫

二人はものの四十分もまちぼうけをくった。里村はもうあきらめているらしかったが、田中はしきりに時計を出して見て、「ちえっ」夕刊の締切に間にあわん。としきりに舌打ちした。

やっとのことで労働者は二人に恐縮そうにお叩頭して出ていった。

田中は入れかわって電報取扱口にたった。

里村は田中の原稿を見て、「たっぷり二十分はかかるね」ともうあきらめながら言った。「一寸その間に用たしをして来るよ、どうせ僕の方は夕刊にまにあいっこはないのだから」と云いながら彼は出ていった。

道の二町もいった頃彼はさっきの労働者にあった。

「どうも有り難う、お蔭で僕の方は夕刊にまにあった、これは少しだが」

彼は十円札をつつんでわたした。

「どうも相すみません」まださっきのつりものこっておりますが、あなたの電報の分が至急報で五円三十銭と、それにわっちゃあ、親類じゅうへ合計十三本も用もない電報をうちましたぜ」

「そりゃどうも有り難う、おかげであの男の方は夕刊に間にあいっこなしだ、なにつりはとっときたまえ」

×     ×     ×     ×

「要するにあの場合、船から一番先きに降りるものは誰かってことに気がついたのは吾ながら感心だて、船員のうちには必ず船客より先へ降りる者があるってことに気がつくなんざ頭のいいもんだなあ。