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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
14 蕃拉布
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,712 字 · 29 页
それもそのはず、ここに居おうのは開化五人組といわれる洋物屋の主人。
いずれも腐儒の因循をわらい、鎖港論を空吹く風と聞き流し、率先して西洋事情の紹介や、医書、究理書の翻刻に力を入れ、長崎や横浜に仕入れの出店を持って手びろく舶載物を輸入する、時勢から二歩も三歩も先を行く開化の先覚者。
毎月八日に、この長崎屋の寮で句会をひらく。俳句はぼくよけで、実は、大切な商談の会。
顧問格の、仁科という西洋通を正客にまねき、最近の西洋事情やら外国船の来航の日取りをきく。
たがいに識見を交換し、結束をかたくして攘夷派の圧迫に耐え、一日も早く、日本をして文明の恩恵に浴さしめ、新時代を招来して、その波に乗って巨利を博そうという商魂志心。
正座についている、精悍な顔つきをした役人ふうな瘠せた男は、もと長崎物産会所の通訳で、いまは横浜交易所の検査役仁科伊吾。
その手前にかけている小柄な男は、洋書問屋の草分、日本橋石町の長崎屋喜兵衛。年に二回和蘭の書物が輸入されるときになると、洋学書生どもが、大枚の金を懐にして、百里の道をも遠しとせず、日本の隅ずみからこの長崎屋を目ざして集って来る。