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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

20 金鳳釵

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,406 字 · 27 页

青空文庫

を、へい、すみませんでしたと担ぎだしてしまう……お嬢さんが、その騒ぎの翌日から、姉がほんとうの姉でなくなったというのは、いかにももっともな話。こういうからくりでチャンとすりかわっていたンですからねえ」

とど助は、手をうって、

「餅屋は餅屋。なるほど、うまいところに気がつくものですたい」

棺桶

「……そうすると、中玄関の敷台へ葬具を下ろしたときに手代が出てきて、ご病人はいま急に持ちなおしたから、すまないが、これは引きとってくれと言ったというんですな」

深川、霊巌寺門前町の葬具屋、平野屋の店さき。

上り框へ腰をかけた顎十郎に応待しているのは、ひと掴みほどの白髪の髷を頭にのせた平野屋の隠居の伝右衛門。腰が曲って、だいぶ耳が遠い。身体をふたつに折り曲げてキチンと膝に手をおき、

「さようでございます。敷台へ湯灌の道具をおろしているところへ、奥から手代が飛んで出てきて、そういう話。棺もおろすやおろさずですぐ引きとってまいりました。……先刻も申しあげましたように、お米さんと手前どもの孫娘のお浪とは踊の朋輩。踊の帰りにはいつも遊びに寄って、お浪とふたりで復習っていましただけに、時疫で枕もあがらぬということで案じておりましたところ、七日の夕方の五ツごろ、万屋から使いがあって先ほど息を引きとったからすぐ棺をということですから