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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

23 猫眼の男

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,960 字 · 24 页

青空文庫

「四人とも、ぼんのくぼに?」

「へえ、そうなんでございます」

顎十郎は、急にひきしまったような声になって、

「その道すじに篝火とか松明とか、そんなものがありましたか」

「滅相もない。古式厳格の暗闇祭。なんでそんなものがございますものか。まっ暗もまっ暗、真の闇でございます」

顎十郎は、なにかしばらく考えていたが、唐突に口を切って、

「ねえ、ひょろ松の旦那、それからとど助さん、不思議なことがあるもんだ、弓というものは相当な距離がなければ射てぬもの。それをですな、鼻をつままれてもわからないようなまっ暗な中で、一人ならず四人まで、ぼんのくぼを射抜くなどということが出来るものでしょうか」

とど助が、引きとって、

「いやア、アコ長さん、人間の眼ではとてもそんなことは出来ませんな。殺された四人が近江屋一家の者だとしたら、いよいよもって奇怪。なぜかと言って、三人ならびになって隙間もなく目白押しをして行く中から、この暗闇の中で、必要な人間だけえらんで射ころすなんぞということは、まずもって絶対に不可能」

「いかにもおっしゃる通りだ。御霊遷がすむまで待つよりほかはないが、殺されたのが近江屋の四人ならば、こりゃア、ちょっと物騒です」