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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

06 三人目

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,248 字 · 27 页

青空文庫

これが、あッしが無実だというなによりの証拠。……いわんや、めくらは勘のいいもの。いくら泡を喰ったとて、右左をとりちげえるようなことはいたしません。なんで、左手に撥なんぞ持たすものですか。……たぶん、こりゃア、あッしの左ききを知っているやつが、あッしに濡れ衣を着せて、突き落そうと企らんだことなのに相違ないんでございます……」

「よく喋言べるやつだな。……して見ると、その杉の市という按摩はちょっと小悧口な面をしているだろう、どうだ」

「いかにもその通り……按摩のくせに、千賀春なんぞに入揚げようというやつですから、のっぺりとして、柄にもねえ渋いものを着けております」

「ふふん、それから、どうした」

「……なにしろ、他人の首に繩のかかるような大事でございますから、うかつにこんなことを申しあげていいかどうかわかりませんが、たったひとつ思いあたることがございます……」

「なるほど、そう来なくちゃあ嘘だ」

「……やはり、千賀春の講中で、いわば、あっしの恋敵……」

「と、ヌケヌケと言ったか」

「へえ」

「途方もねえ野郎だの。……うむ、それで」

「……芝口の結城問屋の三男坊で角太郎というやつ。