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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

06 三人目

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,248 字 · 27 页

青空文庫

「それならいい、亥刻より早く来られちゃ、ちょっと迷惑だ」

ブツクサと呟いてから、

「それで、杉の市が自白たか」

「なかなか強情うございましたが、ぼんのくぼの鍼痕のことを申しますと、とうとう白状いたしました」

「左手に撥を持たせたのも、杉の市の仕業だったろう」

「さようでございます。……角太郎が、じぶんに濡衣を着せるつもりで、こんなことを仕組んだのだ、とうまく言い逃れるために、逆の逆を行ったわけなんでございます」

「執念いの……じぶんの濡衣どころじゃねえ、はじめっから、角太郎を突き落すつもりでやったことなんだ。角太郎が、ゆくりなく、露月亭へ『谷口検校』をききに来ていた。……それから思いついて書いた芝居なんだ」

「へえ、そう言っておりました……なにもかも、みな角太郎にしょわせてやるつもりだって……」

「それにしても、杉の市は、あんまりいい気になってペラペラしゃべりすぎたよ。……あまり調子がよすぎるから、それで、おれは、こいつァ臭いと睨んだのだ」

「まったく。……ありようはこうだったんでございます。……杉の市のほうも、やはり裏口から這いあがって、そっと声をかけて見たが返事がない。