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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

06 三人目

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,248 字 · 27 页

青空文庫

……心臓の真ン中。……あそこへ鍼を打たれたら、こりゃア、ひとったまりもねえの」

千木は、感にたえたようすで、

「なるほど、うまく企みやがった」

「近所で聞き合わして見ると、杉の市という按摩鍼が、いつも千賀春のところへ出入りしていたという。……内職は小金貸。……これが、夫婦になるとかなんとか、うまく千賀春に蕩らしこまれ、粒々辛苦の虎の子を根こそぎ巻きあげられ、死ぬとか生きるとか大騒ぎをやらかしたというのは、ついこないだのこと……」

といって、眼の隅から、ジロリと千太の顔を眺め、

「なんのこたアねえ、こいつが、左きき」

「おッ、それだ」

「そこで、おりゃア、つい先刻、顎十郎に手紙を書いて持たせてやった。……千賀春こと人手にかかってあえない最期。辱知の貴殿に、ちょっとお知らせもうします、といってな」

千太は、むっとした顔つきになり、

「こりゃア、旦那のなさることとも思えねえ。……そ、そんなことをしたら……」

藤波は、手酌でぐっとひっかけておいて、驕慢に空嘯くと、

「ふッふッふ……ところで、甚だ遺憾にぞんずるが、杉の市は直接たっての下手人じゃねえ。どうしてどうして、これにゃア複雑んだアヤがある。