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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

09 丹頂の鶴

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,040 字 · 26 页

青空文庫

なお、当日、午餐には菰樽二挺の鏡をひらき、日ごろ功労のあった重臣に鶴の血をしぼりこんだ『鶴酒』を賜わるのが例になっていた。

文化のはじめごろまでは、鶴御飼場は、千住の三河島、小松川すじ、品川目黒すじの三カ所にあったもので、いずれも四方にひろい濠をめぐらして隣接地と隔離させ、代地と陸地との交通は、御飼場舟という特別の小舟で時刻をさだめて行うなど、なかなか厳重をきわめたものであった。嘉永のころになって、多少ゆるやかになったが、それでも、このころもまだ、御飼場の鶴を殺したものは死罪、傷つけたものは遠島に処せられる。

御飼場には、だいたい、おのおの十五カ所の代(季節によって鶴が集まる場所)があって、鳥見役という専任の役人が代地を管理し、六人の網差と下飼人が常住にそこにつめていて、毎日三度ずつ精米五合をまき、代地におりてきた鶴をならす。

飼いならすのにいろいろな方法があるが、鶴がひとを見ても恐れぬようになると、鷹匠が飼場を検分したのち、そのむねを若年寄に上申する。若年寄と老中が相より協議の上、鶴御成の日時をさだめて将軍に言上するのである。

永井播磨守と池田甲斐守が、大廊下を通って柳営の間へ行くと、老中阿部伊勢守は待ちかねていたようにさしまねき、寛濶に顔をほころばせながら、