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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

11 御代参の乗物

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,028 字 · 28 页

青空文庫

頭から湯気を立てながら、

「おお、旦那、ちょうど、よかった。……それで、お調べのほうはどうでした。まるっきり、あてちがいだったでしょう」

藤波は苦りきって、

「なにを言う。……大塚本伝寺御代参の乗物。……出たときが十四挺で、帰ったときが二十四挺。十挺だけ多く入っている。もう、間違いない」

千太は上の空に聞きながして、

「それはそうと、その条は、まだ殿さまへはお復命になっていねえでしょうね」

「いや、逐一したためて、昨夜おそく差しだしておいた。今ごろはちょうどお手もとへ届いているころだ」

千太は眼の色をかえて、

「げッ、そ、それは、大ごとだ」

「なにが、どうしたと」

千太は手を泳がせて、

「ま、ま、まるッきりの見当ちがい。……十三人の腰元は、どこの木戸も出ていない。実は、安珍坂よりの不浄門からお屋敷へ入って、大井の局に隠れているんでございます」

藤波はサッと血の気をなくして、

「それを、どこから聞きこんだ」

「へえ、あまり寒いので、稲荷下の濁酒屋で一杯やっていますと、入って来たのが、陸尺が職人に化けたような妙な二人づれ。……聞くともなしに聞いていると、チラチラ気がかりなセリフがまじるから、思い切って頭からおどしつけて見ますと、いまもうしあげたような話。